◎東京地裁平成20年1月18日判決(日本マクドナルド割増賃金請求事件)
「管理監督者については、労働基準法の労働時間等に関する規定は適用されな
いが(同法41条2号)、これは、管理監督者は、企業経営上の必要から、経
営者との一体的な立場において、同法所定の労働時間等の枠を超えて事業活
動をすることを要請されてもやむを得ないものと言えるような重要な職
務と権限を付与され、また、賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一
般労働者に比べて優遇措置が取られているので、労働時間等に関する規定の
適用を除外されても、上記の基本原則に反するような自体が避けられ、当該
労働者の保護に欠けるところがないという趣旨によるものであると解され
る。」
「したがって、原告が管理監督者に当たるといえるためには、店長の名称だけ
でなく、実質的に以上の法の趣旨を充足するような立場にあると認められる
ものでなければならず、具体的には、①職務内容、権限及び責任に照らし、
労務管理を含め、企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与し
ているか、②その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであ
るか否か、③給与(基本給、役付き手当等)及び一時金において、管理監督
者にふさわしい待遇がされているか否かなどの諸点から判断すべきである」
として、事実認定の上、管理監督者に当たるとは言えないと判断した。
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http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090707151140.pdf
◎最高裁平成26年3月24日判決(東芝解雇うつ病事件)
高裁は、解雇無効として、本人がうつ病発症したことにつき会社は安全配慮義
務違反等を理由とする損害賠償責任を負うとしたが、損害賠償額につき、本人
に過失があるとして過失相殺を認めていたが、その判断に対して、
「 上告人の業務の負担は相当過重なものであったといえる。・・(略)・・業
務の過程において,上告人が被上告人に申告しなかった自らの精神的健康
(いわゆるメンタルヘルス)に関する情報は、神経科の医院への通院、その
診断に係る病名,神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とするもので、労
働者にとって、自己のプライバシーに属する情報であり、人事考課等に影響
し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようと
することが想定される性質の情報であったといえる。使用者は、必ずしも労
働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払
うべき安全配慮義務を負っているところ、上記のように労働者にとって過重
な業務が続く中でその体調の悪化が看取される場合には、上記のような情報
については労働者本人からの積極的な申告が期待し難いことを前提とした上
で,必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努
める必要があるものというべきである。」
「また、本件においては、上記の過重な業務が続く中で、上告人は・・
(略)・・体調が不良であることを被上告人に伝えて相当の日数の欠勤を繰り
返し,業務の軽減の申出をするなどしていたものであるから,被上告人とし
ては,そのような状態が過重な業務によって生じていることを認識し得る状
況にあり,その状態の悪化を防ぐために上告人の業務の軽減をするなどの措
置を執ることは可能であったというべきである。
これらの諸事情に鑑みると,被上告人が上告人に対し上記の措置を執らず
に本件鬱病が発症し増悪したことについて,上告人が被上告人に対して上記
の情報を申告しなかったことを重視するのは相当ではなく,これを上告人の
責めに帰すべきものということはできない。」
「 以上によれば,被上告人が安全配慮義務違反等に基づく損害賠償として上
告人に対し賠償すべき額を定めるに当たっては,上告人が上記の情報を被上
告人に申告しなかったことをもって,民法418条又は722条2項の規定
による過失相殺をすることはできないというべきである。」
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